▶研究内容

▶主な実験系

▶研究内容


Introduction

私たちの研究室では、ヒトの健康や生活習慣病の発症に関わる遺伝要因や環境要因に関する研究を行っています。また、モデル生物を用いて、病気の原因となる遺伝子の働きを解析しています(研究1-1 & 1-2)

 

さらに私たちは、ショウジョウバエ等の昆虫やゼブラフィッシュを用い、個体づくりを支える栄養や遺伝子について研究しています(研究2-1 & 2-2)

 

また、身体づくりに関する研究で得られた知見を基盤として、昆虫食・昆虫飼料に関する研究も行っています。野菜加工副産物などの食品残渣を利用した昆虫生産に関する研究を行い、持続可能な食料生産の発展に貢献します(研究3)。


Research 1-1 & 1-2

生活習慣病の「なりやすさ」を決める要因とは

糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の発症には、食生活に代表される生活習慣(環境要因)個人の体質(遺伝要因)の組み合わせが重要です。私たちの研究室では、どのような遺伝要因がどのような環境要因と組み合わさったときに、どの程度生活習慣病を発症しやすくなるのかについて研究を進めています。現在、時計遺伝子の個人差と睡眠等の生活習慣との組み合わせが、健康に与える影響について解析しています。

 

しかし、ヒトを対象とした研究だけでは、遺伝子と疾患を結ぶメカニズムの解析は困難です。そこで、遺伝子の機能解析に優れたモデル動物であるショウジョウバエを用い、ヒト生活習慣病関連遺伝子の機能解析も進めています。これまでに、本研究室のヒトの遺伝子解析で生活習慣病との関連が見出されたCNDP遺伝子の働きをショウジョウバエを用いて解析し、CNDPはストレス耐性や個体寿命に関与することを報告しました。


Research 2-1 & 2-2

個体の成長と成熟を支える分子機構の解明

外環境から手に入れた栄養を基に増殖・発育したのち、しかるべき機能を発現するというプロセスは、細胞・組織レベルの分化過程だけでなく、個体レベルの発育過程にも当てはまります。例えば、昆虫は幼虫期に栄養を摂取して身体サイズを増加させたのち、ステロイドホルモンが産生され幼虫期(=成長期)から蛹期(=成熟期)へと移行します。では、生き物は自身の栄養状態をどのように感知し、成長期から成熟期へと発育ステージを切り替えるのでしょうか?私たちは、主にショウジョウバエを用いて、ステロイドホルモン産生と成熟過程を制御する分子機構を解析しています。また、成長期の個体が摂取した栄養を基に成長するために、生体内でどのような遺伝子、分子、ホルモンが機能しているのかについても明らかにしていきたいと考えています。

細胞周期の亜種・核内倍加の役割とは?

私たちの身体を構成する細胞は、「増殖する」能力と「成長する」能力を有しています。身体がつくり上げられる過程において、有糸分裂により細胞が増殖し臓器や身体のサイズが増加するとともに、一部の細胞は増殖を停止し、核内倍加と呼ばれる細胞周期を開始し肥大します。核内倍加は生物界に広く認められており、ヒトでは健常な臓器だけでなく癌組織などの病的な組織でも見受けられます。では、細胞はどのようにして有糸分裂から核内倍加へと細胞周期を切り替えるのでしょうか。また、核内倍加には何らかの生理的意義があるのでしょうか。私たちは、これらの疑問を解き明かすため、ショウジョウバエを用いた遺伝学的な研究に取り組んでいます。詳細はこちら


Research 3

新たな食材・栄養供給源としての昆虫の可能性

身体づくりに関する研究で培った経験や知見を基盤として、昆虫を用いた循環型食糧生産に関する研究にも着手しています。

  昆虫は食品残渣などの未利用資源を摂食・消費し栄養素を効率的に蓄積できることから、新たな栄養供給源として注目されています。しかしながら、食品残渣等の未利用資源を利用した昆虫生産を効率的に行うための技術開発は発展途上であり、生産した昆虫の栄養素や有効性といった科学的知見の蓄積も求められています。

  私たちは、県内の食品企業と連携して、野菜加工副産物などの未利用資源を用いた昆虫の生産条件の検討を行っています。また、LC-MS等の機器分析を用いて、生産した昆虫に含まれる栄養素を解析しています。さらに、昆虫配合飼料を魚類に投与し、昆虫配合飼料が魚類の発育効率、摂食行動、脂肪酸組成に与える影響などを解析しています。

オメガ3脂肪酸に関する研究

上記の通り、昆虫は新たな栄養源として注目されていますが、エイコサペンタエン酸(EPA)などのオメガ3脂肪酸が少ない・含まれないことが栄養面の課題として挙げられます。この課題を解決するアプローチとして、①EPA合成酵素を昆虫生体内で発現させ、EPA含有量を高めることと、②EPAを高濃度で含有し効率的に生産できる生物種を発掘することが挙げられます。

  ①のアプローチでは、モデル昆虫であるショウジョウバエを用いてEPA産出に必要な条件を検討しています。これまでに、既存のEPA合成酵素を導入し、EPAを含有させることに成功しました。現在、より活性の高いEPA合成酵素の探索を行っています。

  ②のアプローチでは、EPAを含有する陸上無脊椎動物・トビムシに着目し、GC-MS等の機器分析を用いて脂肪酸組成やEPA合成経路の解析を行っています。さらに、トビムシやオメガ3脂肪酸合成能を持つ一部の昆虫が有する新規の脂肪酸合成酵素群を同定するために、酵母を用いた酵素活性の評価も行っています。